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太平洋戦争に日本が破れ、焼け跡の中に貧困と無秩序が乱立していた。

そこから立ち上がった逞しい日本人、戦後の高度経済成長を国民全体で真面目に働き成し遂げ、バブルが崩壊を迎えるまで欲望を満たしまくった日本人。

理想の時代から夢の時代にを迎え、虚構の時代へと移り変わった時代は、昭和の終わりと共に静かに激動時代の炎を消していった。

そんな日本の片隅に一人で飢餓や汚辱と闘っている人物がいた。

日雇い労働で食いつないだり、高校生を恐喝し鑑別所送りになったり。

その時18歳だった主人公・正治。

ヤクザの兄弟分にけしかけられて刑務所の独房で冷や飯を食べていたのは、東京オリンピックで日本中がわいていたとき。

『頑張っていきなければ』と自分に誓うも、またもや再びヤクザとひと悶着を起こして北海道網走刑務所に5年間収容された時は29歳だった。

出所後は実兄・孝の働きかけで若松組直系の川野組の子分となり、そこから頭角を現していく。

そんな中でホステス・佳奈に心を奪われていくが、敵対する組のタレコミによってまたもや刑務所に舞い戻ってしまう。

1974年に正治は出所し、それを佳奈は待ってくれていた。

そこから地元に帰るのだったが…

親子の杯を交わした川野が橘組組長・橘(ラサール石井)により殺害されてしまい…

今の時代ではありえない昭和のヤクザが主人公になっていました。

昔は風俗やら飲食やらお店をするには繁華街ならヤクザの力が必要でした。

今は何をするにも『ヤクザと関わりはありません』という誓約書を書かされる時代になって、今時の若者はこの作品がかつての日本だとは思わないかもしれないけれど、これは現実的にあった話と激動の昭和時代を懐かしく感じたりもしました。

井筒監督ならでは映画という感じでしょうか。

少々大げさ気味に描かれている部分はありますが、昭和から平成へと駆け足で生き抜いたヤクザの半生をみると、とてもよく描かれていると思いました。

礼儀や上下関係を重んじる世界の中で、ユーモラスな場面があったのも面白かったです。

(50代男性)

ヤクザものなので登場人物は多いです。

その中で特に気になったのが、主人公・井藤役を演じた松本利夫という俳優さんです。

今までドラマでも見かけたような記憶はなく、今回初めて知りました。

自分の好みというかヤクザもので人情に厚いタイプの人間を描くにはぴったりという顔立ちです。

映画は単に美人、美男、スタイルで選ばれないと思うので、きっと井筒監督のイメージするキャラクターに合致するタイプだったのでしょう。

優しさと激しさ、情、人徳がその顔立ちからうかがえます。

この映画を見る前に『実在のモデルがいる』と聞いたことがあります。

もしかするとその方にも似ているのかもしれないなんて思ったりもしましたが、その実在するモデルさんにも壮絶な半生を生で聞いてみたいとすら思いました。

(50代男性)

男ならやっぱりやくざものに興味はあると思います。

僕も今ではすっかり息をひそめてしまった組織ですが、昔は社会のレールからはずれてしまった人たちが集まっていたある意味駆け込み寺のような部分も少しはあったと思います。

そこで、どうしようもなかった社会からあふれ出た若者を、掃除やパシリで使いヤクザの世界を叩きこんでいっていました。

少しばかり話が飛んだりしているかもと思った部分もありますが、そこは井筒監督の集大成で思うように作られたんだと思うとそこも監督ファンとしては感慨深いものもあります。

本当にこんな人生があるんだと思うと、やっぱりヤクザの世界って興味深いですね。

キャストも豪華な人ばかりですが、一番笑えたのがやくざものに木下ほうかさんが出演されていたことです。

さすがにここは突っ込みましたね。

『もしかして井筒監督と個人的に仲良しなの？』としか考えられないのです(笑)

そういうストーリー以外のキャスティングも、この映画の見どころの一つだと思います。

(40代男性)

たくさんの俳優が出演していて、皆さんそれぞれに気になるポイントがありました。

でもアイドルグループの松本さんが演じられていることは驚きました。

ヤクザではないけれどEXILEは男性縦社会だと感じ部部分はあるので、その世界と共通する部分があるのかもしれません。

ただ、彼はヤクザ顔ではないような。

とっても温かみのある人情深い顔をされているのです。

そこが一番表れていたのが、60歳のお誕生日の時です。

兄をみとった時もそう感じました。

愛する佳奈(柳ゆり菜)のために、彼女が望むものを持って足刺激お店に通うのもやはり人間ぽかったですね。

作品全体を通して観てみると、松本さんの味がとてもよく出ていたと思ったので注目をした人物としてあげました。

(40代男性)

正治の人生が描かれていました。

それは、一人の貧しい青年がヤクザの世界に入って、何度も刑務所に入ってから組をまとめるまでになりあがっていく半生です。

引退までしっかりと描かれています。

エンターテインメントというよりもドラマよりだと感じます。

見終わった時にどういうわけか、正治が近くにいないことに少し寂しさを感じるというか不思議な感じになったのを覚えています。

やくざの世界なので抗争は当たり前ですが、敵対する相手が襲撃に来た時に『もうその辺りでやめておけ』といったり、刑務所の中で子分の絶命を知り涙をこらえていたり、ヤクザであれ何であれ人の上に立つ資質のある人だと思いました。

今は『反社会的勢力』なんて呼ばれ方をされているヤクザで、実際に人を殺したり恐喝などはいけないのですが、人情という部分ではとても理解できる内容になっていました。

(50代女性)

主人公・井藤正治役の松本利夫(EXILE)が気になりましたが、その妻役だった柳ゆり菜も上手に演じられていたと思います。

ヤクザの奥さんは子分たちの面倒も見ていかないといけないし、相撲部屋のおかみさんみたいに大変だし肝も必要です。

夫が浮気をした時はうまいこと井藤を手のひらで転がしていたのもさすがだし、段々貫録が出て行くのも面白かったです。

井藤と一緒に妻も強く懐深くなっていっているのです。

最初は気が強いタイプで苦手と思いましたが、刑務所にいる時もずっと井藤を待ち続けていて一途な部分も見せてくれました。

和服が似合っていてヤクザでは着物が似合う女性じゃないとと思うので、素敵なキャスティングだったと思います。

(50代女性)